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2019年01月23日(木)
【社説比論】米大統領選挙 各紙、先行き見えない政権に懸念示す

米大統領選挙で共和党のドナルド・トランプ氏が当選しました。大方の予想では民主党のヒラリー・クリントン有利と見られていましたが、結果は驚きを持って伝えられました。各新聞社はこの結果をどう受け止めたのでしょうか。一夜明けた11月10日の各紙朝刊社説の見出しは以下の通りです。

 
 
朝日新聞 トランプ氏の勝利 危機に立つ米国の価値観(11月10日付)
 
東京新聞 トランプのアメリカ(上) 民衆の悲憤を聞け(11月10日付)
 
読売新聞 米大統領選 トランプ氏勝利の衝撃広がる(11月10日付)
 
毎日新聞 米大統領にトランプ氏 世界の漂流を懸念する(11月10日付)
 
産経新聞 トランプ氏の勝利 「自由の国」であり続けよ(11月10日付)
 
日経新聞 米社会の亀裂映すトランプ氏の選出(11月10日付)
 
沖縄タイ [トランプ氏当選]怒りをどこに導くのか(11月10日付)
 
琉球新報 米大統領にトランプ氏 辺野古新基地断念せよ 知事は直ちに訪米すべきだ(11月10日付)

 

各紙の主張は、先行きが見えない不安を懸念するもので溢れました。まず、選挙結果について驚きの声を隠せない社も。

 

<戦後の国際秩序を揺るがす激震(中略)衝撃の選挙結果だった>(朝日新聞)
 
<変化を期待して米国民は危険な賭けに出た>(東京新聞)
 
<まさに怒涛のような進撃だった(中略)英国が国民投票で欧州連合(EU)離脱を決めたことに続く、大きな衝撃である。>(毎日新聞)
 
<不動産王としてしられてはいたが、政治経験はない。イスラム教徒の入国禁止を叫ぶなど数々の暴言、失言で世間を騒がせた。そういう氏の勝利は衝撃的であり、同時にアメリカ国民の選択にも驚きを禁じ得ない>(産経新聞)
 
<今回の大統領選ほど米国の揺らぎを感じさせた選挙はなかった>(日経新聞)
 
<大方の予想を覆す歴史的な選挙となった。「怒れる白人層の反乱」であり、「既成政治」への不信感の表れである>(沖縄タイムス)
 

多くの新聞社がトランプ氏に不安を抱く

 
多くの新聞社は、トランプ大統領の誕生に驚きと不安を感じたようでした。なかでもトランプ氏の大統領の資質を疑問視する声が多くありました。朝日新聞はこのように書いています。
 

<内向きな米国の利益を公言する大統領の誕生で、米国の国際的な指導力に疑問符がつく。(中略)敵を作り対決を自演したトランプ氏の手法は露骨なポピュリズムだ> 

 

<出口が見えない中東の紛争、秩序に挑むような中国やロシアの行動、相次ぐテロ、北朝鮮の核開発など、国際情勢はますます緊張感をはらんでいる。地球温暖化や難民、貧困問題など、世界各国が結束して取り組むべき課題も山積みする。従来の米国は、こうした問題に対処する態勢づくりを主導してきた。しかし、トランプ氏がそれを十分に把握しているようには見えない>

 

読売新聞もトランプ氏の資質について疑問視し、大統領選について厳しく批判しています。

 

<中傷合戦と醜聞に終始し、「史上最悪」と言われる大統領選だった。相手候補に対するレッテル貼りやポピュリズムが目立ち、政策論争は深まらなかった。米国政治の劣化は深刻である>
 
<トランプ氏は、公約の正しさが評価されたのではなく「反クリントン」の波に乗って勝利したことを自覚すべきだ>
 
<雇用創出や経済成長を実現するというトランプ氏の公約は根拠に欠ける。実際に環太平洋経済連携協定(TPP)の合意を放棄し、北米自由防衛気協定(NAFTA)を見直せば、米国の威信低下と長期的衰退は避けられまい>

 

朝日新聞と読売新聞は、各社説のなかでも最もトランプ氏に批判的であるように見受けられました。読売新聞が指摘するように中傷合戦になったことは残念です。中傷合戦になればもともと暴言王などの負のイメージを持っていたトランプ氏に利があるように思えます。ヒラリー氏は政府にいた経験や元大統領夫人の経歴を持つ者として政策論争でトランプ氏に差を見せつけていれば、変わっていたかもしれません。自らの長所を生かせず、相手と同じ土俵に立ってしまったそんな印象を受けます。

 
 
     *

 
 

毎日新聞もトランプ氏に大きな懸念を表明しました。
 
<米国の民意は尊重したいが、超大国の変容は大きな影響を及ぼす。メキシコ国境に不法移民流入などを防ぐ壁を造る。イスラム教徒の入国を規制する(中略)こうしたこうしたトランプ氏の方針は国内外の将来を一気に不透明にした>

 

<日米関係も例外ではない。同氏は米軍駐留経費の全額負担を日本に求め、それが不可能なら核武装も含めて米軍抜きの自衛措置を取るよう訴えてきた。米国が主導する軍事組織・北大西洋条約機構(NATO)にも軍事費の負担増を要求し、「嫌なら自衛してもらうしかない」というのが基本的なスタンスだ>

 

<利益誘導型のトランプ流「米国第一」主義が先行すれば国際関係は流動化する。経済にせよ安全保障にせよ国際的なシステムが激変する可能性を思えば、世界漂流の予感と言っても大げさではなかろう。だが、米国は単独で今日の地位を築いたのではない。故レーガン大統領にならって「米国を再び偉大な国に」をスローガンとするのはいいが、同盟国との関係や国際協調を粗末にして「偉大な国」であり続けることはできない。その辺をトランプ氏は誤解しているのではないか>

 

産経新聞は「トランプ・リスク回避」のためにも独自の防衛努力を強める覚悟を持つべきだと言います。

 

<予想外の展開、規格外の人物の登場により「トランプ・リスク」が生じるのは避けられまい。これに振り回されないため、政治、経済の両面での備えが必要だ>
 
<安全保障の観点では、日米同盟軽視の姿勢は日本の安全に直結する。トランプ氏は日本だけでなく、北大西洋条約機構(NATO)加盟国や韓国など他の同盟国にも駐留米軍経費の負担増を求める考えを示している。発想の根本には損得勘定があるようだが、国際秩序の維持に努める重大な意義と天秤(てんびん)にかけられる話ではあるまい>
 
<日本の経費負担の現状や在日米軍の持つ抑止力の意義について誤解を解く努力を重ねるべきだ。より重要なのは、東シナ海の尖閣諸島の危機を抱える日本として、自ら防衛努力を強める覚悟を持つことである>

 

上記2紙がいうように、日本の安全保障の在り方が大きく変わる可能性があります。先が読めない彼の言動に不安を抱くのも当然です。日本としては、様々な状況に備える必要がありそうです。米国に頼りきっている日本の安全保障の在り方について、今後活発に議論されるようになりそうです。

 

最も冷静な論調に感じたのは日本経済新聞です。

 

<数々の暴言で物議を醸してきた人物だけに内外に大きなきしみを生みかねない。ただ、ひとりの指導者の言動ですべてが左右されるほど国際情勢は単純でもない。まずは冷静に新政権の針路を見極めたい>
 
<トランプ現象には様々な要因がある。所得格差が広がり政治の安定の基礎となる中間層が薄くなった。中南米系移民の増加によって米社会の主役だった白人の地位が脅かされつつあると感じる人も増えた。「一つの米国」を目指したオバマ政権は米社会のこうした亀裂を埋めることができなかった>
 
<米国民が一体感を失えば社会は機能不全に陥り、国際社会での指導的地位も保てなくなる。トランプ政権が発足後、まず取り組むべきは社会の分断を止めることだ>
 
<不法移民の流入に一定の歯止めをかける対策は必要だろう。だが、トランプ氏が主張する壁の建設などではなく、不法移民の雇用への罰則強化などが現実的だ>
 
<トランプ氏は駐留米軍の費用を日本に全額負担させると発言してきた。日本の安全保障が米軍に依存しているのは事実であり、ある程度の負担増はやむを得ない。新政権の関心をアジアに向けさせるためにも、早めに交渉の席に着くことが現実的だろう(中略)日本の防衛力強化も避けて通れない道だ。とはいえ、唯一の被爆国である日本はトランプ氏が一時言及したからといって核武装を選ぶことはあり得ない。国連平和維持活動(PKO)など世界平和への協力に日本も汗を流すなどして日米の絆を深めるのが現実的だ>
 
<欧州連合(EU)離脱を選んだ6月の英国の国民投票に続くサプライズは、世界にさらなるポピュリズムの風を吹かせるだろう。日本はその風にのみ込まれることのないようにしたい。経済の改善や社会の調和に努めることで安定した民主主義国家としての基盤を強めていくことが重要だ>

 

まず現状を分析し、問題点を挙げ、その問題に対する解決策を出す。主張の是非は置いといて、冷静な主張に思えます。安全保障に関して言えば産経新聞と主張が近いでしょうか。

 

期待する声は?

 

不安の声が圧倒的ななか、期待する声もあります。東京新聞は史上最低の大統領選と言われた選挙のなかで、次の点を収穫として指摘しました。

 

<政策論争よりも中傷合戦が前面に出て「史上最低」と酷評された大統領選。それでも数少ない収穫には、顧みられることのなかった人々への手当ての必要性を広く認識させたことがある。トランプ氏の支持基盤の中核となった白人労働者層だ>
 
<製造業の就業者は一九八〇年ごろには二千万人近くいたが、技術革新やグローバル化が招いた産業空洞化などによって、今では千二百万人ほどにまで減った。失業を免れた人も収入は伸びない>
 
<一方、経済協力開発機構(OECD)のデータでは、米国の最富裕層の上位1%が全国民の収入の22%を占める。これは日本の倍以上だ。上位10%の占める割合となると、全体のほぼ半分に達する。これだけ広がった貧富の格差は、平等・公正という社会の根幹を揺るがし、民主国家としては不健全というほかない。階層の固定化も進み、活力も失う>
 
<グローバル化の恩恵にあずかれず、いつの間にか取り残されて、アメリカン・ドリームもまさに夢物語-。トランプ氏に票を投じた人々は窒息しそうな閉塞(へいそく)感を覚えているのだろう>
 
<トランプ氏は所得の再配分よりも経済成長を促して国民生活の底上げをすると主張する。それでグローバル化の弊害を解消できるかは疑問だ。対策をよく練ってほしい(中略)国民が再びアメリカン・ドリームを追うことのできる社会の実現をトランプ氏に期待したい>
 
<女性や障害者をさげすみ移民排斥を唱えるトランプ氏は、封印されていた弱者や少数派への偏見・差別意識を解き放った。そうした暴言は多民族国家である米社会の分断を、一層進行させることにもなった。オバマ大統領は「先住民でない限り、われわれはよその土地で生まれた祖先を持つ。移民を迎え入れるのは米国のDNAだ」と語ったことがあるが、その通りだ。米国が移民を排除するのは、自己否定に等しい>
 
多くの新聞がトランプ氏の不安要素を取り上げるなかで、支持された層に着目し論じています。トランプ氏の経済政策や本人の資質には疑問を抱きながらも、弱者と言われる支持層を救う政治を期待しました。リベラルな論調で有名な東京新聞らしい視点といえます。

 
 
     *

 
 

さて、トランプ氏は駐留経費を全額負担しなければ在日米軍基地を撤退する可能性を示唆していましたが、米軍基地撤退を求める在沖縄二紙はどのように伝えているのでしょうか。

 

沖縄タイムスは次のように述べました。

 

<トランプ氏は日米関係に触れ、「安保ただ乗り」論を批判した。「米軍の駐留経費負担を大幅に増額しない場合は米軍を撤退させる」「中国や北朝鮮への対抗手段として核兵器保有を容認する」とも言っている>
 
<米軍普天間飛行場の辺野古移設問題を見直す絶好の機会にすべきだ。未知数のトランプ氏へどう対応し、どう働き掛けるか。沖縄も検討を急がなければならない>

 

思っていたよりも、米軍基地に関する見解は少なく、多くがトランプ氏の排外的な姿勢や世界の排外化を危惧する論調でした。しかし、やはり米軍基地撤退に対しては「好機」にすべきだとしています。

 

続いて琉球新報は次のように主張しました。

 

<トランプ氏は「米軍の日本駐留費の負担増」を主張していた。新大統領に訴えたい。沖縄県民は71年間、米軍基地の負担を強いられてきた。もはや限界である。普天間飛行場の県内移設や北部訓練場でのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)建設の断念を強く求める>
 
< 「米国第一主義」を宣言するトランプ氏は討論会で「私たちは日本を防衛し、ドイツを防衛し、韓国を防衛し、サウジアラビアを防衛し、他国を防衛している。もし彼らが相応の負担をしないのなら、守ることはできなくなる」とし、日本や北大西洋条約機構(NATO)諸国に対し、同盟国側の防衛費の負担増を要求した。在日米軍を撤退させるとの考えを示したほか、安保条約の見直しにも言及した。トランプ氏が次期大統領に就任した後、在日米軍の駐留経費のほか、米国内にも不満が残る在沖米軍のグアムなどへの移転経費などにも、影響を及ぼす可能性がある。日本政府は負担要求にどう応えるのか。政権交代は日本の国土面積の0・6%に74・46%の米軍専用施設が集中する沖縄にとって現状を変更する好機である>
 
<トランプ氏の辺野古新基地建設への対応は未知数だ。米有力シンクタンクのアジア専門家は「辺野古移設について、トランプは全くの『白紙』状態だ。今後、判断していくことになるだろう」と指摘している。それならば、翁長雄志知事は早期に米国を訪れ、政権交代前、新政権の対沖縄政策が固まる前に、辺野古新基地建設の断念を求めるべきだ>

 

沖縄タイムスと同様「好機」としながらも、トランプ氏の対応は未知数と期待感はそれほど高くないようです。辺野古基地移設を断念させるよう知事に訪米を促しました。両紙ともトランプ氏のこれまでの姿勢に全面的に支持表明するわけにもいかず、信用できる人物と思っていないのでしょう。

 

トランプ氏に対する警戒感が強く表れていた各社説。日米安保や在日米軍基地問題、TPPなど多くの分野で日本に影響があります。トランプ氏がどのように舵取りをしていくのか、そして日本がどう対応していくのか。世界中に影響を与えるアメリカ大統領ですから、その動向に注目です。


  

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