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【社説比論】電通社員自殺 全紙「社会全体として取り組むべき」

「社説」は言論機関としての新聞社の立場や意見を表明し、ニュースに対する問題提起を行うことで議論を活発化させる目的があります。硬い表現で意見が書かれているため、人気がないと言われている社説ですが、それぞれ新聞社のスタンスが明らかになるので、比較してみるとなかなか面白いものです。様々なスタンスの言論機関があるということは「表現の自由」がある国という証拠でもあります。そこで、新たな企画として「社説比論(しゃせつひろん)」と題して、各新聞社の社説をもとにさまざまな意見を連載で比較していこうと思います。

 

1回目のテーマは「電通社員自殺」。長年、社会問題となっているいわゆるブラック企業問題は、解決の糸口が見つかっていないのが現状です。先日、昨年のクリスマスに自殺した大手広告代理店電通の女性社員(当時24)の労災が認められ、各マスメディアに大きく取り上げられました。各新聞社はどのように解決すべきと考えているのでしょうか。まず各新聞の見出しです。

 

朝日新聞 過労自殺根絶 企業も国も問われる(10月12日付)

 

東京新聞 過労死・自殺 残業時間には上限制を(10月12日付)

 

読売新聞 電通過労自殺 長時間残業の解消が急務だ(10月13日付)

 

毎日新聞 電通の過労自殺 若者の命すり減らすな(10月14日付)

 

産経新聞 電通の過労自殺 「命より大切な仕事ない」(10月15日付)

 

各紙の中身を見ていくと共通するポイントは、国全体や社会全体として取り組むべき問題だと認識している点です。朝日新聞は次のように主張しています。

 

<形式的で不十分な労働時間の把握、残業は当然という職場の空気……。企業体質の抜本的な改善が必要だろう。(中略)だが、企業任せでは過労自殺は根絶できない。国の役割も重要だ。まずは、いまの制度のもとでできる指導・監督を徹底することが必要だ。(中略)総労働時間の上限規制など、具体策に踏み出すべきだ>

 

国が労働時間の上限に規制を設けなければ、問題解決にならないと指摘しました。続いて東京新聞です。

 

<政府は働き方改革の議論を進めているが、過労死に直結する長時間労働の抑制は最優先に取り組むべき課題だ。(中略)日本の長時間労働は先進国の中でも最悪の水準にある。(中略)命を守る対策に、猶予は許されない>

 

東京も朝日と同様の主張です。国が最優先で取り組むべきは長時間労働の抑制だと言います。いまの制度のもとでできる指導・監督と前置きした朝日に対して、より踏み込んだ主張という印象を受けます。読売新聞はどうでしょうか。

 

<根絶に向けて、官民で取り組みを加速させねばならない。(中略)先進国の中でも最悪の水準の長時間労働がある。(中略)政府の働き方改革実現会議は、今年度中に長時間労働の是正策をまとめる。働く人の命を守るため、実効性ある対策を示すべきだ>

 

官民で長時間労働の是正を取り組まなければならないとする論調は他紙と同じ認識ですが、具体的な対策については「実効性のある対策を示すべき」という表現にとどまりました。

 

毎日新聞は<政府は「働き方改革」を掲げるが、働く人の命をないがしろにする労働現場を根絶すべきである。(中略)武蔵野大学の教授が「残業100時間で過労死は情けない」とインターネットに投稿し、大学側が謝罪した。長時間労働を許容する社会の風潮を一掃することが必要だ。政府は長時間労働の改革に取り組んでいるが、立場の弱い新入社員を追い詰める企業には厳しく対処すべきだ>

 

政府の規制が必要という意見のほか、長時間労働を許容する社会の風潮があることも指摘。さらに長時間労働を課す企業に対し、なんらかの処分を与えるべきというニュアンスに受け取れます。

 

産経新聞は<政府は、長時間労働の是正を「働き方改革」の柱として位置づけている。(中略)実効性ある規制を打ち出す必要があろう。今回の問題は電通だけでなく、長時間労働が広がっている産業界全体への警鐘と受け止めるべきである>

 

読売と同様、政府が規制をかける必要性があるとしつつも、具体的な対策については触れずに社会全体の警鐘として受け止めるべきだとしています。

 

より早急にまたは厳しい規制をすべきだとする東京・毎日と、まずは今できることを徹底し規制していくべきとする朝日、ほか3紙に比べて具体的な対策を示さなかった産経・読売といった論調に分かれました。

 

全紙共通して「長時間労働」に対する問題意識を持っていますが、どのように規制・対策していくかについては微妙に論調が異なっています。

 

本サイトの社説にあたる自説もご紹介しましょう。<世間からは「どうして辞めなかったのか」という声が聞かれるが、社会が彼女を追い詰めた一面があることを指摘しておきたい。(中略)「自殺してしまうくらいなら、早くに転職したほうが正しい判断」と言えば誰もが納得するはずなのに、社会ではその「判断力」よりも「すぐに辞めてしまう子」というマイナスな評価に変化する。ブラック企業を是正することも大事だが、この社会風潮や評価基準を変えなければ、ブラック企業による犠牲者は後を絶たない>

 

まずは蔓延するブラック企業からまずは逃げやすい環境整備が必要で、現在の社会の評価基準に疑問を投げかけました。しかし、どうやって社会風潮や評価基準を変えるのかについては言及していませんでした。マスメディアがこの問題を多く取り上げ、海外の事例を出しつつ、他紙と同様に国が規制することからはじめなければ社会は変わらないと考えています。こういった問題を考えるたびに「社会」を変えることは難しく、根深い問題だと痛感します。我々国民が主体的に行動できないことは由々しきことです。

 

同じような社説でも、読んでみるとその新聞社のスタンスが見え隠れし、さまざまな意見があることが読み比べればわかります。「社説不要論」も存在しますが、読み比べてみることで多様な意見が日本に存在することを感じることが出来るはずです。問題をどう捉えているか、具体的な問題点はどこか、どう対策すべきか。多様な意見があってこその民主主義です。社説を有料記事にしている新聞社もありますが、比較することに意義があると思うので是非社説だけはオープンにしていただきたい。そして国民が多くの意見に目を通す習慣をつけることが大事なことだと考えています。


  

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