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「米兵救助」との産経報道、地元紙が「事実確認が不十分なまま批判した」と反論

昨年12月に沖縄自動車道で車両6台が絡む衝突事故が発生し、走行中だった米海兵隊曹長が意識不明の重体になった。その際に、産経新聞が「米兵が日本人を救出した」と報じ、その行為を地元紙である「琉球新報」「沖縄タイムス」が報じなかったとして「報道機関を名乗る資格はない」「日本人として恥だ」と批判した。しかし、1月30日に琉球新報が「米海兵隊は29日までに『(曹長は)救助行為はしていない』と本紙に回答」「県警も『救助の事実は確認されていない』としている。県警交通機動隊によると、産経新聞は事故後一度も同隊に取材していないという」と産経の報道を疑問視し、「産経新聞は事実確認が不十分なまま、誤った情報に基づいて沖縄メディアを批判した可能性が高い」と反論した。

 

毎日新聞や朝日新聞も琉球新報の報道を追い、いずれも沖縄県警や米海兵隊から「(救助したという行為について)確認できていない」と回答を受けたという。

 

琉球新報にも書かれている通り、トルフィーヨさんが救助行為をしたのかどうかは現時点でまだ分からない。救助された人の証言やトルフィーヨさん自身への取材もまだできない。あったのは沖縄米海兵隊のツイッターが当初救助したと断定したツイートを投稿したが、後に訂正されたことである。すなわちその後に認識を改めた米海兵隊による情報を元に記事を作ったのだろう。もちろん広報などに取材はしているだろうが。

 

この件に関して真実はどうだったのか、誰にも分からない。産経が報じたことが正しかったのかもしれないし、間違っていたのかもしれない。だが、現時点でトルフィーヨさんに関する続報もなく、事実確認が不十分だったのではないかとの指摘はその通りだろう。何が問題なのかと言えば、事実確認が不十分な取材だったのにも関わらず、他紙を「報道機関を名乗る資格はない」と断罪してしまったことだ。

 

琉球新報の記事では、何故記事にしなかったのかという経緯がしっかりと書かれている。

 

続報を書かなかった最大の理由は、県警や米海兵隊から救助の事実確認ができなかったからだ。一方で救助していないという断定もできなかった。海兵隊は、現場にいた隊員の証言から「他の車の運転手の状況を確認はしたが救助行為はしていない」と回答したが、曹長が誰かを助けようとしてひかれた可能性は現時点でも否定できない。

 曹長自身も接触事故を起こしてはいるが、あくまでも人身事故の被害者であり、一時は意識不明に陥った。救助を否定することでいわれのない不名誉とならないか危惧した。

 それでも今回報道に至ったのは、産経新聞が不確かな「救助」情報を前提に、沖縄メディアに対して「これからも無視を続けるようなら、メディア、報道機関を名乗る資格はない。日本人として恥だ」と書いたことが大きい。産経新聞の報道が純粋に曹長をたたえるだけの記事なら、事実誤認があっても曹長個人の名誉に配慮して私たちが記事内容をただすことはなかったかもしれないが、沖縄メディア全体を批判する情報の拡散をこのまま放置すれば読者の信頼を失いかねない。

ー琉球新報2018年1月30日付「産経報道『米兵が救助』米軍が否定 昨年12月沖縄自動車道多重事故」よりー

 

はっきり言って今回の問題に関しては、琉球新報の慎重な判断や、現時点でも事実かそうでないかは分からないとする姿勢のほうが報道機関としての誠実さを感じられる。新聞記者は事実に基づいたものでしか書いてはいけない。もちろん人間がやることには間違いも起こり、誤報をなくすなんて不可能だろう。それでも報道機関は事実確認を怠ってはならない。

 

もしトルフィーヨさんが救助行為をしていたと事実確認が十分に取れていたならば、気色ばんで次の日には琉球新報に反論する記事が出されるはずだ。ところが、4日経過しても未だに続報がない。もし今後トルフィーヨさんが救助行為をしていたという事実が明らかになったとしても、事実確認が十分でない状態で報じていたなら、報道機関のあり方として大きな問題だ。その状態で沖縄2紙を「報道機関として失格」などと批判したなら、産経は沖縄2紙に謝罪すべきだ。

 

だが、これは何も産経だけの話ではない。2016年に群馬県太田市の臨時職員がパリで行われた格闘ゲームの世界大会で優勝したと市が記者会見で発表した。地元紙の上毛新聞と朝日新聞が記事にしたが、その臨時職員はフランスにも行っていないことが明らかになった。あまり大きな出来事ではないとはいえ、記者発表をそのまま信じて報道してしまったのだ。記者はどんな小さな出来事でも事実確認を怠ってはならないという象徴的なニュースだった。市役所や、海兵隊というしっかりとした組織の発表であったとしても、その発表を鵜呑みにして事実確認を怠れば、このような出来事が起こってしまう。

 

裏どりをすることは記者の基本ではあるものの、どの報道機関も怠らずに徹底する必要性があるようだ。


  

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