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キュレーションメディア問題 読者は常に懐疑心を忘れるな

 


 

先月下旬、ディー・エヌ・エー(守安功代表取締役)が運営する医療情報を取り扱うキュレーションサイト「WELQ(ウェルク)」が、不正確な内容や著作権侵害のおそれがある記事を大量に配信したとして、同企業が運営する10つのキュレーションサイトが非公開になった。インターネット上で不特定多数の人間に業務を発注できるクラウドソーシングを利用して、素人に記事を書かせるなどの手法が問題視されるなど、ほかのマスメディアからもインターネット記事に対する信憑性を疑問視する姿勢が多く上がった。

 

私自身、クラウドソーシングから記事執筆を行なったことが1度だけある。しかし、2度目の受注を受けようとした時、クライアントの指示は「記事の内容に沿う画像をネット上から検索してください」など、明らかな著作権侵害だったため、クラウドソーシングで記事を執筆することをやめた。自分のサイトで執筆したほうが、実績になると思ったからでもあるが。

 

不正確な情報を流すメディアは確かに問題だ。新聞やテレビはこぞって、キュレーションサイトやインターネットサイトの記事の信憑性を追及したが、本サイトのような個人サイトも含めて全てのメディアは「同じ穴のムジナ」だ。むしろ正確な情報しか流さないメディアなど存在しない。今年も中日新聞が貧困の実態を記事にしたが捏造だったことが判明、朝日・上毛新聞などが事実無根の出来事を裏取せず記事にするなど、メディア全体への信頼感が揺らいだ。

 

短期であったが記者として働いたにも関わらず、こう言ってしまうと記者としての資質が問われ、今後記者としての仕事ができなくなってしまうかもしれないが、私は言わなければならない。記者というのは出来事の真相を調べて書くことが仕事であるが、真相を知ることはどんなに優秀な記者でも不可能なのである。記者にできることは、出来るだけ真相に近づこうと努力するほかない。その努力は何があっても不断でなければならないが、永久に真相を知ることは不可能なのである。記者はそんな不合理な仕事なのだ。

 

真相が分かったと言っても、当事者がなぜそのようなことをしたのか。その当事者の考え方やこれまでの生き方を完璧に把握するのは困難だ。事実しか記事にできない記者は、多くの見えない部分を調べなければならないが、どのような小さな事件でも「すべてを知る」ことは神様、仏様以外の人間にできることはない。ただ、目に見えたものだけを「真相」と呼んで自己満足する。しかし、本当の真相は目に見えない部分や当事者にもわからない部分がたくさんあるのだ。私は記者としての資質は、真相なんて神様以外わかるものではないと分かっていて、虚しさを感じながらも、少しでも真相に近づく努力をしつづけることができる人間だと思っている。

 

そして、記者だけではなく、読者である国民もそのことを認識すべきなのだ。正確な情報だけを流すメディアはこの世に絶対的に存在しないと。各社のイデオロギーが邪魔をすることもあるし、記者が勘違いすることもあるし、読者自身の思想や経験の違いで受け取り方が変わる。私たちがこれまで習ってきた歴史の教科書だって事実がころころ変わるのである。身も蓋もない言い方をすれば、絶対的に完璧で正確な記事・文章など存在しないと認識したほうがよい。それよりも、いろんな記事を見比べたり、自ら調べたりすることで、読者自身も真実に近づこうとする姿勢が大事なのだ。記事や本に書かれていることは記者や執筆者からの断片的な情報でしかない。真相ではなく、(間違っているかもしれない)ただの情報だ。

 

これは決して記者の仕事を否定しているわけではない。報道という仕事がなければ、国民に情報が伝わらず民主主義の根幹が崩れてしまう。そして真相はわからなくても、それに極力近づく努力をしつづけることに意義がある。ただ国民はメディアに理想を押し付けすぎでもあり、真相を知りたいなど不可能なことを言ってることに早く気づくべきだ。真相をしることは誰にもできないことを自認し、「真相など誰にもわからないが、それに近づく努力」の重要性は、記者だけではなく読者も共有すべきなのだ。そうすれば、記事に右往左往される危険性はなく、どっしりと事を見極めようとする感覚を得ることができる。今回の騒動は、その共通認識を持つ契機となれば良い。「キュレーションメディアの問題点」とは論点がズレているが、読者が常に懐疑心を忘れないことは、どの情報媒体を利用する際にも共通すべき心得である。

 


  

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