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2019年01月23日(木)
<金正男氏暗殺>”北朝鮮の良心”が暗殺される 北朝鮮に産まれた悲しき男

「その国に産まれなかったら…」なんて言いたくないが、今回ばかりはそう思わざるをえない。14日、韓国などの複数メディアが金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄である金正男(キム・ジョンナム)氏(45)が暗殺されたと報じた。一部の報道ではマカオに飛び立とうとしていた正男氏がマレーシアのクアラルンプール空港で、北朝鮮の工作員とみられる女性に殺害されたという。

 

前々から金正男氏を暗殺するという情報は各メディアも伝えており、北朝鮮の工作員による暗殺という情報が本当だとしても驚くべきことはない。しかし、いざ本当に暗殺されたとなると衝撃だ。これが金正恩委員長の指示ならば、兄弟を殺したことになる。歴史で習ったような出来事がいま現実として、近隣諸国で行われているのだ。

 

金正男氏と聞いてまず思い出すのが2001年に偽造パスポートで日本に入国しようとした疑いで、成田空港にて拘束されたというニュースだ。当時私は小学生だったが、その当時テレビやマスメディアは小泉旋風一色の時期で、小泉政権発足直後だったこともあり、とても印象に残っている。「悪いおじさんがディズニーランドに行きたがってるんだ」という印象だった。

 

歳を重ねるにつれ、拉致問題や核開発など北朝鮮のニュースに触れ、北朝鮮に対する個人的な印象は悪化の一途を辿った。そんな中で「ディズニーランドにいきたがっていた悪いおじさん」を再び見る機会があった。それがテレビ朝日のインタビューだった。彼はインタビュアーに終始にこやかに対応し「後継者のニュースには興味がない。私は今の生活が幸せでこれからも続けたい。今の立場は自由だから」「自由は全ての人にとって大切だ」「私は常に世界の平和を望んでいる」などと話していた。

 

独裁者の印象が強い金ファミリーでありながら、政治には関心がなく、自由が大事だと説く金正男氏に私は驚いた。犯罪者や独裁者などの血縁というだけで差別されることもよくあるが、それだけで差別してはいけないと改められたような気がした。その後日本のインターネット上でも、「正男(まさお)」というあだ名で親しまれており、日本人の北朝鮮観を少し和らげる人物でもあった。

 

しかし、金正恩委員長が北朝鮮の実権を握ると「正恩氏の周辺で粛清がはじまった」という報道がされはじめた。金正恩体制のナンバー2とされた張成沢(チョン・ソンテク)氏が処刑されたのは、金正男氏と親密だったからではないかとの憶測も流れた。シンガポールやマカオを転々とした生活を続け、ついには命を奪われてしまった。

 

兼ねてから「後継者に興味はない」と話していた彼は、テレビのインタビューの通り「自由な生活」がしたかっただけに思える。それでも「金ファミリー」であることには変わりなく、それによって周囲から偏見などもあっただろう。大変な面も多々あったということは想像に難くない。真摯にインタビューに応じ、時には祖国の体制を非難する姿を見ると、「偏見への払拭」や「自由」に対する大きい思いがあったのではないかと推察する。「もし」なんて言葉を使うのは無意味かもしれないが、彼が北朝鮮以外の国で金ファミリーではなく産まれていたとしたら、彼が望む自由な生活が出来たかもしれないと思うとやりきれない思いになる。

 

気がかりなのは金正男氏の家族だ。息子や妻は一体どうなるのか。粛清を次々に行なっている金正恩委員長の「恐怖政治」は断じて許されるものではない。広い視野を持った北朝鮮の人民の命が失われてしまったことは、あまりにも大きな代償だ。


  

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