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憲法改正の是非は国民がどれだけ憲法を理解しているかが大切

(写真:強権政治を推し進めるトルコのエルドアン大統領=R4BIA.com)

 

私たちは中学の公民、高校の政治経済という社会科目で憲法を厭というほど学んだ。基本的人権だけでも平等権、自由権、社会権など様々な権利が存在していたため、覚えるのに精一杯だった記憶がある。しかし、ただ暗記するだけでは、テストの点数は取れたとしても、なんのために憲法は存在するのか。国を形作る上で憲法がどれだけ重要かを知る由もない。

 

社会の先生はもちろん憲法の意味をしっかりと説明してくれていたのかもしれないが、暗記することに精一杯だった私はただひたすら語尾に「権」がつく言葉を覚えていっただけだった。憲法の大切さに気づいたのは恥ずかしながら20代前半の憲法改正の議論が活発になってきたころである。同じように、暗記しただけで大人になっていく人間は多いのではないだろうか。

 

今になって思うと、社会科のなかであれほど憲法の権利を覚えさせられた意味がよくわかる。先日、私の友人が住むトルコで憲法改正を問う国民投票が行われた。結果、賛成票がわずかに上回り、トルコは憲法改正の道を歩むことになる。ただ、それは議院内閣制は廃止され、大統領が議会の解散権持ち、判事を指名する権限を持つことで司法への介入が可能になるなど、三権分立の機能が失われることを意味する。現在のトルコは昨年7月にクーデター未遂が起きて以来、9ヶ月以上に渡って非常事態宣言を出している。非常事態宣言は与党の過半数で承認され、宣言後は大統領が法律と同等の効力を発揮する政令を出すことが可能になる。トルコの非常事態宣言は、議会での審議がなくなり、違憲性も問われないと憲法で明記されているため、エルドアン大統領の暴走を誰も止めることができない。そんな非常事態宣言下で大量の公務員を解雇し、ジャーナリストも多数逮捕されるなど反体制派や政権に批判的な者への弾圧が続く。最近ではインターネット百科事典「ウィキペディア」の閲覧も不可能になった。

 

本来は権力者を縛り、国民の権利を守るための憲法の重要性をトルコの例をみるだけでもうかがい知ることができる。エルドアン大統領はカリスマ的な人気を誇っているが、報道の自由、表現の自由、結社の自由もなく、きちんと権力が分立してチェックアンドバランスが機能されていなければ民主主義国家と到底いえず、賛成した国民は本当にそんな国家を望んでいるのだろうか。権力側を縛る憲法について、主権者である国民がしっかり理解しなければ、トルコの二の舞になりかねない。尤もトルコの憲法改正を巡る国民投票の結果は、不正があったのではないかと言われているが。

 

日本でもそう遠くない未来に憲法改正に関する国民投票が行われるかもしれない。先日、憲法改正を悲願とする安倍晋三首相が改憲派の集会で「2020年を新しい憲法が施行される年にしたい」と明言した。中身についても言及し、9条の1項と2項を残しつつ自衛隊の存在を明記することや、高等教育までの無償化にも前向きな考えを示した。

 

自衛隊の明記と高等教育の無償化について私は異存はない。ただ戦力の不保持と自衛隊の存在を認めることが、両立するかどうかは疑問符がつく。侵略戦争はせず、国防に特化した戦力は保持すると明記し、その戦力は自衛隊だと書けば分かりやすい。

 

その2つの事柄については自民党案と私の考えに差異はないように思う。だが、以前に自民党憲法改正草案を価値観の押し付けだと批判したのと同様に、9条について焦点を当てて「賛成」、「反対」を決めるのは実に危険だ。緊急事態に国民の人権を制約させることができる緊急事態条項や、その他我々がこれまで享受してきた権利がどの程度制限されることになるのかなど、改憲勢力が推し進める憲法改正案について注意深く見ておく必要がある。憲法改正は法律が改正される場合と違い、衆参両院の3分の2以上の賛成で国民に発議し、最終的には国民投票で過半数の賛成が必要となる。最終的な防波堤となるのは、私たち主権者である国民なのだ。だから主権者である我々国民は憲法について、もう一度考える機会が必要だろう。

 

たとえ私自身が改憲派であっても、権力の暴走を止める手段である憲法については厳格に見る必要がある。今後、国民同士のなかで白熱するであろう憲法改正議論に積極的に参加し、また政治に関心のある友人・知人同士でも意見交換したい。そして、公民や政治経済の教科書をもう一度開かなければならない。


  

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